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原文準拠 Phase 2:ゼロ知識証明

2.1 Midnight 入門

Midnight Academy Phase 2 / Unit 2 / 2.1 の原文準拠版。Midnight が解こうとする課題(合理的プライバシー)・ACE という3つの自由・他チェーンとの違い・Cardano パートナーチェーンとしての立ち位置を正確にやさしく。


📘 Academy原文準拠 | Phase 2 · Unit 2 · Lesson 2.1 Introduction to Midnight 内容に忠実な日本語版です。原文(英語)・図・動画は公式 Academy(外部リンク・別タブで開きます)を正本に。

ここまでの5つのレッスンで、ゼロ知識証明(ZKP)とは何か、いろいろな証明システムがどう動くか、それが実際にどこで使われているかを学んできました。ここからは、その具体的な1つの実装である Midnight に集中します。

Midnight は「ただのプライバシー系ブロックチェーン」ではありません。ほかの多くのプライバシープロジェクトが、まったく無視してきた問題を解こうとしています。

その問題とは——大事なデータを守りながら、なおかつルールも守るには、どうすればよいか? というものです。

順番に説明していきます。

動画で学ぶ(公式)

🎬 Midnight 入門の概要 YouTubeで開く ↗
🎬 Midnight はどこが違うのか YouTubeで開く ↗
🎬 公式の解説動画 YouTubeで開く ↗
🎬 公式の解説動画 YouTubeで開く ↗

Midnight が解こうとしている問題

Ethereum のような従来のブロックチェーンは、すべてを公開します。あらゆる取引、あらゆる残高、あらゆるスマートコントラクトとのやりとりが、だれにでも永久に見えてしまいます。透明性という意味ではすばらしいのですが、次のような相手にとっては困りものです。

  • 機密データを扱うビジネス
  • お金のプライバシーを大事にしたい個人
  • GDPR のような規制のもとで活動する人

Monero のようなプライバシーコインは、逆方向に振り切りました。最初からすべてを隠すやり方です。匿名性という意味ではすばらしいのですが、こんどはコンプライアンス(法令順守)の面で困りものになります。取引所は上場を取り消し、規制当局はピリピリし、ビジネスは法的リスクなしには使えません。

多くのプロジェクトは、これを「どちらか一方」の選択だと考えます。公開か、秘匿か。透明か、匿名か。

Midnight は問いかけます——「両方やればいいのでは?」 と。

その考え方を、Midnight では “rational privacy”(合理的プライバシー) と呼びます。取引ごとに、何を見せて何を隠すかを自分で選ぶのです。ビジネスデータを競合から秘密にしたまま、規制当局にはコンプライアンスを証明する。個人の取引を世間からは隠したまま、税金を払ったことは示せる状態を保つ。

これは「プライバシーのためのプライバシー」ではありません。現実のユースケースのための、実用的な道具としてのプライバシーです。

3つの自由(The Three Freedoms)

Midnight の「3つの自由」を示す概念図。分散型自律組織と結社の自由、分散型マーケットプレイスと商取引の自由、分散型メディアと表現の自由を、それぞれアイコンと説明とともに並べている

図の説明:Midnight が守ろうとする「ACE」の3つの自由——Association(結社)/ Commerce(商取引)/ Expression(表現)——を並べた概念図。それぞれが現実のユースケース(政治活動、ビジネス、自由な発言など)と結びつくことを示しています。

Midnight の哲学は、ACE freedoms と呼ばれるものを守ることが中心にあります。

Association(結社) — 監視されることなく、好きな相手とつながる権利。政治的な組織活動、内部告発、あるいは単に自分の交友関係(ソーシャルグラフ)を秘密にしておくこと、などを思い浮かべてください。

Commerce(商取引) — あらゆる取引を競合・データ収集業者・悪意ある者にさらすことなくビジネスを行う権利。購入履歴・取引先・価格戦略は、競争上の強みであって、最初から公開されるべきものではありません。

Expression(表現) — 検閲や報復をおそれずに発言・創作する権利。すべての行動が公開台帳に永久に記録される世界では、自己検閲があたりまえになってしまいます。

これらは抽象的な理想ではありません。投機や DeFi の先へブロックチェーンを広げていくための、実用上の必須条件です。

  • 医療システムは、患者データを公開チェーンに載せられません。
  • サプライチェーンは、取引先との関係をさらけ出せません。
  • 投票システムは、票が見えてしまっては成り立ちません。

Midnight は、こうしたユースケースを 実現可能にするために作られています。

Midnight はどこが違うのか

1件のトランザクションが Midnight で「あなたが選ぶ」分岐に入り、シールド(非公開)と非シールド(公開)のどちらかを選べること、そしてどちらを選んでも同じネットワーク・同じトランザクションとして扱われることを示すフロー図

すでに前のレッスンで ZKP を理解しています。Midnight はそのアーキテクチャ全体で ZKP を使いますが、その使い方は、この 選択的開示(selective disclosure) のモデルに沿ったものになっています。

デフォルトではなく「選択」によるプライバシー

Midnight は shielded(秘匿)取引unshielded(公開)取引の両方をサポートします。どの取引でどのレベルのプライバシーが必要かは、あなたが取引ごとに決めます。コーヒー代の支払い? 公開でも構わないかもしれません。給与の支払い? おそらく shielded がよいでしょう。どちらの選択肢も同じネットワーク上に存在します。

秘密を持てるスマートコントラクト

多くのブロックチェーンのスマートコントラクトは完全に透明で、すべての入力・出力・状態変化が見えてしまいます。Midnight のスマートコントラクトは、2つの状態を同時に扱えます。

  • public state(公開状態):ブロックチェーン上にあり、だれもが見られる
  • private state(プライベート状態):あなたのローカルマシン(手元の端末)にとどまる

コントラクトのロジックは、その2つをゼロ知識証明でつなぎます。

コンプライアンスに対応できる設計

ここが最大の差別化ポイントです。Midnight は、規制当局から 隠れる手助けをしようとしているのではありません。ほかのみんなにすべてをさらすことなく、規制当局を満足させる手助けをしようとしているのです。

  • 取引そのものを明かさずに、取引がルールに従っていることを証明する。
  • 自分の身元を共有せずに、自分が制裁リスト(sanctions list)に載っていないことを示す。

本格的な暗号技術の上に

Midnight は Halo 2 を使います。これは Plonk をベースにした recursive SNARK(再帰的 SNARK)で、Zcash が 2022 年にアップグレードした際に採用したのと同じ証明システムです。trusted setup(信頼できるセットアップ)は不要です。

ネットワークはさらに Kachina を導入しています。これはプライバシーを保つスマートコントラクトのためのプロトコルで、ブロックチェーンにありがちなボトルネックなしに 並列実行(parallel execution) を可能にします。

Midnight の立ち位置

図の説明:Bitcoin・Ethereum・Zcash といった世代ごとのブロックチェーンの系譜の中で、Midnight が「第4世代」としてどこに位置づくかを示した図。それぞれの世代が得意としたこと(分散性・プログラマビリティ・秘匿性)を引き継ぎつつ、選択的開示を加える流れを表しています。

Midnight は Cardano のパートナーチェーンとして立ち上がりますが、独立して動くように設計されています。独自のコンセンサス・独自の台帳・独自のトークンを持ちます。Cardano の stake pool operator(ステークプール運用者)は、希望すれば Midnight のブロックプロデューサーになることができ、これによって Midnight は、ゼロから作らなくても既存の分散インフラを利用できます。

Midnight は 第4世代のブロックチェーンだと考えてください。次の各世代の教訓の上に築かれています。

  • Bitcoin … 分散性(decentralization)
  • Ethereum … プログラマビリティ(programmability)
  • Zcash のようなプライバシーチェーン … 秘匿性(confidentiality)

そして、そのどれも完全には達成できなかった 選択的開示(selective disclosure) の能力を加えています。

testnet は 2024 年後半にローンチされ、mainnet は 2026 年に予定されています。

これから学ぶこと

Midnight がなぜ存在し、どんな問題を解いているかが分かったところで、ここからは「実際にどう動くのか」を掘り下げていきます。これからの数レッスンで、次のことを学びます。

  • Account vs UTXO — Midnight がなぜ両方のモデルを使うのか、それぞれをいつ使うのか
  • The Kachina Protocol — スマートコントラクトがどうやってプライベート状態を持てるのか
  • Midnight’s Dual Ledger System(二重台帳システム) — shielded データと unshielded データの仕組み
  • Transaction Lifecycle(取引のライフサイクル) — 証明がどう生成され、どう検証されるのか

そのあと、Midnight のトークンエコシステムを扱います。

  • NIGHT Tokens — ネイティブのユーティリティトークンと、そこから DUST がどう生まれるか
  • Shielded and Unshielded Tokens — 妥協のないプライバシー
  • ZSwap — 異なるアセット間の atomic swap(アトミックスワップ)

開発者として押さえる点

  • Midnight の核心は “rational privacy”(合理的プライバシー)=取引ごとに「見せる/隠す」を選ぶ 選択的開示 モデル。「全部公開」でも「全部匿名」でもない第三の道。
  • 取引は shielded(秘匿)/ unshielded(公開) の両方が同じネットワークに存在。スマートコントラクトは public state(チェーン上)と private state(ローカル)の2状態を持ち、ZKP でつなぐ。
  • 設計思想は コンプライアンス対応:取引内容を見せずにルール順守を証明、身元を明かさずに制裁リスト非掲載を示す。
  • 暗号基盤は Halo 2(Plonk ベースの recursive SNARK、trusted setup 不要)と、並列実行を可能にする Kachina プロトコル。
  • 立ち位置は Cardano のパートナーチェーンだが独立(独自のコンセンサス・台帳・トークン)。第4世代として Bitcoin / Ethereum / Zcash の教訓を継ぎ、選択的開示を加える。
  • ロードマップ:testnet は 2024 年後半、mainnet は 2026 年予定

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