📘 Academy原文準拠 | Phase 2 · Unit 2 · Lesson 2.1 Introduction to Midnight 内容に忠実な日本語版です。原文(英語)・図・動画は公式 Academy(外部リンク・別タブで開きます)を正本に。
ここまでの5つのレッスンで、ゼロ知識証明(ZKP)とは何か、いろいろな証明システムがどう動くか、それが実際にどこで使われているかを学んできました。ここからは、その具体的な1つの実装である Midnight に集中します。
Midnight は「ただのプライバシー系ブロックチェーン」ではありません。ほかの多くのプライバシープロジェクトが、まったく無視してきた問題を解こうとしています。
その問題とは——大事なデータを守りながら、なおかつルールも守るには、どうすればよいか? というものです。
順番に説明していきます。
動画で学ぶ(公式)
Midnight が解こうとしている問題
Ethereum のような従来のブロックチェーンは、すべてを公開します。あらゆる取引、あらゆる残高、あらゆるスマートコントラクトとのやりとりが、だれにでも永久に見えてしまいます。透明性という意味ではすばらしいのですが、次のような相手にとっては困りものです。
- 機密データを扱うビジネス
- お金のプライバシーを大事にしたい個人
- GDPR のような規制のもとで活動する人
Monero のようなプライバシーコインは、逆方向に振り切りました。最初からすべてを隠すやり方です。匿名性という意味ではすばらしいのですが、こんどはコンプライアンス(法令順守)の面で困りものになります。取引所は上場を取り消し、規制当局はピリピリし、ビジネスは法的リスクなしには使えません。
多くのプロジェクトは、これを「どちらか一方」の選択だと考えます。公開か、秘匿か。透明か、匿名か。
Midnight は問いかけます——「両方やればいいのでは?」 と。
その考え方を、Midnight では “rational privacy”(合理的プライバシー) と呼びます。取引ごとに、何を見せて何を隠すかを自分で選ぶのです。ビジネスデータを競合から秘密にしたまま、規制当局にはコンプライアンスを証明する。個人の取引を世間からは隠したまま、税金を払ったことは示せる状態を保つ。
これは「プライバシーのためのプライバシー」ではありません。現実のユースケースのための、実用的な道具としてのプライバシーです。
3つの自由(The Three Freedoms)

図の説明:Midnight が守ろうとする「ACE」の3つの自由——Association(結社)/ Commerce(商取引)/ Expression(表現)——を並べた概念図。それぞれが現実のユースケース(政治活動、ビジネス、自由な発言など)と結びつくことを示しています。
Midnight の哲学は、ACE freedoms と呼ばれるものを守ることが中心にあります。
Association(結社) — 監視されることなく、好きな相手とつながる権利。政治的な組織活動、内部告発、あるいは単に自分の交友関係(ソーシャルグラフ)を秘密にしておくこと、などを思い浮かべてください。
Commerce(商取引) — あらゆる取引を競合・データ収集業者・悪意ある者にさらすことなくビジネスを行う権利。購入履歴・取引先・価格戦略は、競争上の強みであって、最初から公開されるべきものではありません。
Expression(表現) — 検閲や報復をおそれずに発言・創作する権利。すべての行動が公開台帳に永久に記録される世界では、自己検閲があたりまえになってしまいます。
これらは抽象的な理想ではありません。投機や DeFi の先へブロックチェーンを広げていくための、実用上の必須条件です。
- 医療システムは、患者データを公開チェーンに載せられません。
- サプライチェーンは、取引先との関係をさらけ出せません。
- 投票システムは、票が見えてしまっては成り立ちません。
Midnight は、こうしたユースケースを 実現可能にするために作られています。
Midnight はどこが違うのか

すでに前のレッスンで ZKP を理解しています。Midnight はそのアーキテクチャ全体で ZKP を使いますが、その使い方は、この 選択的開示(selective disclosure) のモデルに沿ったものになっています。
デフォルトではなく「選択」によるプライバシー
Midnight は shielded(秘匿)取引と unshielded(公開)取引の両方をサポートします。どの取引でどのレベルのプライバシーが必要かは、あなたが取引ごとに決めます。コーヒー代の支払い? 公開でも構わないかもしれません。給与の支払い? おそらく shielded がよいでしょう。どちらの選択肢も同じネットワーク上に存在します。
秘密を持てるスマートコントラクト
多くのブロックチェーンのスマートコントラクトは完全に透明で、すべての入力・出力・状態変化が見えてしまいます。Midnight のスマートコントラクトは、2つの状態を同時に扱えます。
- public state(公開状態):ブロックチェーン上にあり、だれもが見られる
- private state(プライベート状態):あなたのローカルマシン(手元の端末)にとどまる
コントラクトのロジックは、その2つをゼロ知識証明でつなぎます。
コンプライアンスに対応できる設計
ここが最大の差別化ポイントです。Midnight は、規制当局から 隠れる手助けをしようとしているのではありません。ほかのみんなにすべてをさらすことなく、規制当局を満足させる手助けをしようとしているのです。
- 取引そのものを明かさずに、取引がルールに従っていることを証明する。
- 自分の身元を共有せずに、自分が制裁リスト(sanctions list)に載っていないことを示す。
本格的な暗号技術の上に
Midnight は Halo 2 を使います。これは Plonk をベースにした recursive SNARK(再帰的 SNARK)で、Zcash が 2022 年にアップグレードした際に採用したのと同じ証明システムです。trusted setup(信頼できるセットアップ)は不要です。
ネットワークはさらに Kachina を導入しています。これはプライバシーを保つスマートコントラクトのためのプロトコルで、ブロックチェーンにありがちなボトルネックなしに 並列実行(parallel execution) を可能にします。
Midnight の立ち位置
図の説明:Bitcoin・Ethereum・Zcash といった世代ごとのブロックチェーンの系譜の中で、Midnight が「第4世代」としてどこに位置づくかを示した図。それぞれの世代が得意としたこと(分散性・プログラマビリティ・秘匿性)を引き継ぎつつ、選択的開示を加える流れを表しています。
Midnight は Cardano のパートナーチェーンとして立ち上がりますが、独立して動くように設計されています。独自のコンセンサス・独自の台帳・独自のトークンを持ちます。Cardano の stake pool operator(ステークプール運用者)は、希望すれば Midnight のブロックプロデューサーになることができ、これによって Midnight は、ゼロから作らなくても既存の分散インフラを利用できます。
Midnight は 第4世代のブロックチェーンだと考えてください。次の各世代の教訓の上に築かれています。
- Bitcoin … 分散性(decentralization)
- Ethereum … プログラマビリティ(programmability)
- Zcash のようなプライバシーチェーン … 秘匿性(confidentiality)
そして、そのどれも完全には達成できなかった 選択的開示(selective disclosure) の能力を加えています。
testnet は 2024 年後半にローンチされ、mainnet は 2026 年に予定されています。
これから学ぶこと
Midnight がなぜ存在し、どんな問題を解いているかが分かったところで、ここからは「実際にどう動くのか」を掘り下げていきます。これからの数レッスンで、次のことを学びます。
- Account vs UTXO — Midnight がなぜ両方のモデルを使うのか、それぞれをいつ使うのか
- The Kachina Protocol — スマートコントラクトがどうやってプライベート状態を持てるのか
- Midnight’s Dual Ledger System(二重台帳システム) — shielded データと unshielded データの仕組み
- Transaction Lifecycle(取引のライフサイクル) — 証明がどう生成され、どう検証されるのか
そのあと、Midnight のトークンエコシステムを扱います。
- NIGHT Tokens — ネイティブのユーティリティトークンと、そこから DUST がどう生まれるか
- Shielded and Unshielded Tokens — 妥協のないプライバシー
- ZSwap — 異なるアセット間の atomic swap(アトミックスワップ)
開発者として押さえる点
- Midnight の核心は “rational privacy”(合理的プライバシー)=取引ごとに「見せる/隠す」を選ぶ 選択的開示 モデル。「全部公開」でも「全部匿名」でもない第三の道。
- 取引は shielded(秘匿)/ unshielded(公開) の両方が同じネットワークに存在。スマートコントラクトは public state(チェーン上)と private state(ローカル)の2状態を持ち、ZKP でつなぐ。
- 設計思想は コンプライアンス対応:取引内容を見せずにルール順守を証明、身元を明かさずに制裁リスト非掲載を示す。
- 暗号基盤は Halo 2(Plonk ベースの recursive SNARK、trusted setup 不要)と、並列実行を可能にする Kachina プロトコル。
- 立ち位置は Cardano のパートナーチェーンだが独立(独自のコンセンサス・台帳・トークン)。第4世代として Bitcoin / Ethereum / Zcash の教訓を継ぎ、選択的開示を加える。
- ロードマップ:testnet は 2024 年後半、mainnet は 2026 年予定。
やさしい版・公式へ
- やさしい版:Midnight のアーキテクチャ
- 公式:Academy Courses(外部リンク・別タブで開きます)(Phase 2 / Unit 2 / 2.1 Introduction to Midnight)
- 公式 docs:Midnight とは(docs.midnight.network)(外部リンク・別タブで開きます)
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