📘 Academy原文準拠 | Phase 1 · Unit 1 · Lesson 1.1 History of Blockchain Technology 内容に忠実な日本語版です。原文(英語)・図・動画は公式 Academy(外部リンク・別タブで開きます)を正本に。
🎬 原文には動画があります: https://www.youtube.com/watch?v=5IMbhHOPYLo(外部リンク・別タブで開きます)
動画で学ぶ(公式)
はじめに
ブロックチェーンを一言でいうと、世界じゅうの何千台ものコンピュータが「誰が何を持っているか」を、誰かに仕切られることなく合意し合う仕組みです。社長もいない、本社ビルもない、政府の管理もない。あるのは数学と経済のしくみだけ。それが、みんなを正直にさせています。
では、なぜこれが自分ごとなのでしょう。
銀行の送金が3〜5営業日かかるのを不思議に思ったことはありませんか。じつは銀行はお金をていねいに運んでいるわけではなく、データベースの数字を書きかえているだけです。海外送金で30ドルの手数料を取られても、銀行のコストは10セントほどかもしれません。あるいは「不審な取引のためアカウントを凍結しました」と言われ、その「不審」の正体が、いつもと違う街でコーヒーを買っただけ、ということもあります。
こうした問題はすべて、わたしたちのデジタル生活がどこかの会社のサーバーを通っているために起きます。ある会社がお金を、別の会社がデータを握っている。そしてそのデータベースは、いつか必ずハッキングされます。

「そういうものでしょ?」と思うかもしれません。でもブロックチェーンが可能にしたものを知ると、見え方が変わります。チェース銀行にお金を預けたり、PayPal に決済を任せたり、政府が通貨を刷りすぎないよう祈ったりする代わりに、ブロックチェーンは何千台ものコンピュータが同じ記録を持ち合う世界をつくりました。
- 1台のコンピュータだけでは不正できない
- どの会社もあなたの資金を凍結できない
- どの政府もそれを止められない
実際にいま、通貨が崩壊しつつある国の人々が Bitcoin で貯蓄を守り、出稼ぎ労働者が高い手数料を払わずに故郷へ送金し、アーティストが画廊に2割の取り分を取られずにコレクターへ直接売っています。
この章では、Bitcoin の不思議な始まりから、Midnight のプライバシー技術まで、わたしたちがどうやってここまで来たのかをたどります。
歴史と進化
Bitcoin とブロックチェーンの誕生(2009)
すべては2009年、Satoshi Nakamoto(サトシ・ナカモト)と名乗る人物(あるいは集団)がつくった Bitcoin から始まりました。今日にいたるまで、その正体は誰にも分かっていません。世界を変える技術を残して、ふっと姿を消したのです。
Bitcoin が解いた問題は、こうです。誰も中央に置かないまま、世界じゅうのコンピュータに「誰が何を持っているか」を合意させるには?
たとえば Napster のような昔のファイル共有では、音楽はコピーできたので共有できました。でもお金はコピーできません。同じ1ドルを二度使う(二重支払い)ことを止める必要があります。「この取引は正しい」と言ってくれる銀行が真ん中にいないのに、どうやって何千台ものコンピュータが合意するのか。

Bitcoin の突破口は技術だけでなく経済のしくみにもありました。システムを維持する人に、システム自身が報酬を払うのです。
実際の動きはこうです。
- 何千台ものコンピュータ(ノード, nodes と呼びます)が、これまでのすべての Bitcoin 取引の完全なコピーを持つ
- あなたが Bitcoin を送ると、その取引が全ノードに知らされる(ブロードキャスト)
- マイナー(miners)と呼ばれる特別なノードが、取引をまとめてブロック(blocks)にしようと競争する
- 複雑なパズルを解く(基本は、当たりが出るまで数を当てつづける作業)
- 勝者は新しい Bitcoin で報酬を受け取る。だいたい10分ごと
- ほかの全員がその作業を検証し、自分のコピーを更新する
誰も仕切っていないのに、全員が全員を見張っている。何千人もの会計士がお互いの帳簿をチェックし合い、全員が一致しないと取引が通らない、というイメージです。
こうして、ひとつの組織には支配されず、偽造もできず、数分で世界じゅうへ送れるデジタルマネーという、それまで存在しなかったものが生まれました。銀行の休業日も、「システム停止中」も、購入内容を理由にした口座凍結も、ありません。
Ethereum とスマートコントラクト(2015)
Bitcoin は「銀行なしでもデジタルマネーは成り立つ」ことを証明しました。そして2015年、当時19歳だったロシア系カナダ人プログラマー Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)が、もっと大きなアイデアを持ちました。ブロックチェーンで、お金の記録だけでなくプログラムも動かせたら?
違いをたとえるなら、Bitcoin は「Bitcoin の持ち主を追うだけ」の電卓。Ethereum は、どんなプログラムでも走らせられるコンピュータです。そのプログラムはスマートコントラクト(smart contracts)と呼ばれ、書かれたとおりに、どの会社にも左右されず実行されます。
これが可能にした例です。
- フリーランサーが成果物を納品すると、自動で報酬が支払われる(請求書も「小切手は郵送中」もなし)
- 世界の反対側の人に直接お金を貸して利息を得る(銀行不要)
- コピーできないデジタルアート(いわゆる NFT)
- 伝統的な会社のかたちを持たないグループが、投票で意思決定し、数百万規模の資金を運用する
Ethereum はブロックチェーンをプログラム可能なプラットフォームに変えました。創設者たちはこれを「programmable money(プログラム可能なお金)」――自分自身で実行されるルールが組み込まれたお金――と呼びました。たとえば、子どもが18歳になったら解錠される貯金口座、資産を自動で分配する遺言、目標額に届かなければお金を返すクラウドファンディング。弁護士も銀行も、ルールを途中で変えられる誰かも、不要です。
ところが、ここから話が厄介になります。これが大事な点です。Ethereum 上のものは、すべて公開され、永遠に残ります。
文字どおり、すべてです。午後3時47分に5万ドルを送ったあのウォレットアドレスは、ずっとそこに残ります。少し調べれば(あるいは管理がずさんなら)、そのアドレスは現実の人物に結びつけられます。すると、あなたの金銭生活は丸ごと開かれた本になります。副収入も、元恋人による支出の追跡も、深夜の恥ずかしい買い物も、すべて公開です。
さらに、医療データ・個人情報・企業秘密は、法律上、公開ブロックチェーンに載せられません。そしてネットワークが混雑すると、ごく単純な取引に200ドルの手数料がかかることさえありました。50ドルを送るのに200ドル、という出来事が、何度も実際に起きたのです。
第3世代のプラットフォーム(Cardano とその先)
2017年ごろには、これらの問題を直す必要があると人々が気づきます。Bitcoin は安全だけれど、まるごと一国を超える電力を使う。Ethereum はプログラム可能だけれど、高くて遅い。
そこで Cardano(カルダノ)のような第3世代ブロックチェーンが登場します。ブロックを追加するために電力を燃やして競争する(Bitcoin のやり方)代わりに、Cardano はこう考えました。「みんなが保証金を預けるだけでいいのでは?」
2つのやり方を整理します。

これは省エネ(電力を99%削減)だけの話ではありません。第3世代は、ほかの課題にも取り組みました。
- 速度(Speed):毎秒数千件の取引。Bitcoin の毎秒7件ではなく
- 相互運用性(Interoperability):異なるブロックチェーンどうしが実際に通信できる
- 形式的検証(Formal verification):コードが正しく動くことの数学的証明(バグが数百万ドルの損失になりうるため)
新しいブロックチェーンはそれぞれ、何かを解決すると主張しました。Solana は速度、Polkadot はブロックチェーン同士の接続、Avalanche は素早いファイナリティ。けれど実際にはどれもトレードオフを抱えています。完璧なブロックチェーンは、まだ存在しません。

プライバシー重視のブロックチェーンの登場(Midnight)
そして今にいたります。ここからが本当におもしろいところです。
ブロックチェーンには矛盾があります。みんなが検証できるよう透明である必要があるのに、現実の世界はプライバシーを必要とするのです。医療記録は公開できません。企業秘密を競合に見せるわけにはいきません。18歳以上であることを示すために、生年月日を見せる必要などないはずです。
これを解こうとしているのが、Midnight のような第4世代ブロックチェーンです。彼らはゼロ知識証明(zero-knowledge proofs)という仕組みを使います。これは、情報そのものを明かさずに、あることが真実だと証明できるというものです。
- パスポートを見せずに、有効なパスポートを持っていることを証明する
- 生年月日を明かさずに、18歳以上だと証明する
- 残高を見せずに、十分なお金があると証明する
不可能に聞こえますが、数学的に成り立ちます。そしていま現に動いています。

Midnight が掲げる新しい考え方が「private by default, transparent by choice(既定で非公開、選択によって公開)」です。何を、誰に見せるかを自分で選べるのです。税務当局にはすべてを見せ、競合には何も見せない。顧客データを露出させずに、規制当局へはコンプライアンスを証明する。
これは怪しい取引を隠すためではありません。ブロックチェーンを、現実で本当に使えるものにするためです。
- 医師が中身をさらさずに検証できる医療記録
- 仕入れ先を明かさずに監査できるサプライチェーン
- 公開にならずに規制当局を満足させる財務記録
- 個人のままでいられる個人データ
「すべてが永遠に公開」から「あなたがデータを管理する」への進化は、すべてを変えます。これにより、ブロックチェーンはようやく、法律上プライバシーが求められる現実データの99%を扱えるようになります。
Bitcoin の「お金に銀行は要らないのでは?」から、Midnight の「プライバシーと透明性は、対立しなくてよいのでは?」へ。いまわたしたちはそこにいて、しかも、まだ始まったばかりです。
開発者として押さえる点
- 世代で整理する:第1世代 = Bitcoin(2009, デジタルマネー)→ 第2世代 = Ethereum(2015, スマートコントラクト)→ 第3世代 = Cardano など(速度・相互運用・形式的検証)→ 第4世代 = Midnight(プライバシー)
- コンセンサスの2方式:Bitcoin は Proof-of-Work(電力で競争)、Cardano は Proof-of-Stake(保証金を預け、不正すれば没収)。エネルギー効率と安全性のトレードオフを理解する
- 公開チェーンの落とし穴:Ethereum 等では取引・アドレス・残高が永久に公開される。だから医療・個人情報・企業秘密は載せられない
- Midnight の核心:ゼロ知識証明で「中身を見せずに証明」。設計思想は private by default, transparent by choice。何をどこまで開示するかを開発者・利用者が選べる
- 完璧なチェーンは無い:速度・相互運用性・プライバシー・コストはトレードオフ。Midnight はその中でプライバシーを担う一手
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- やさしい版:ブロックチェーンってなに?
- 公式:Academy Courses(外部リンク・別タブで開きます)(Phase 1 / Unit 1 / 1.1)
- 関連ドキュメント:Midnight 公式ドキュメント(外部リンク・別タブで開きます)(Midnight の全体像とゼロ知識の役割)
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